ハンガリーの田舎町の旅館で起きた殺人事件。
結果的に13人の人が亡くなったのだが、その13人には殺人犯の夫婦2人も含まれている。
10人は宿泊客。残る1人は・・・。
生活に困窮した夫妻が
思いついたのは・・・
時は1919年のこと。
クロンベルクと妻はハンガリーのティサクルトという町で旅館を営んでいた。
だが、1918年に終結した第一次世界大戦の影響で、旅行客はめっきり減っていた。
娘は家を出て売春婦に身を落とし、息子も出奔してしまった。
夫婦は生活に困窮するようになっていった。
そこで夫婦は決めた。
「宿泊客を殺して金品を奪おう」。
ワインに
ストリキニーネを混入
夫は町でストリキニーネという毒を大量に購入した。
使い道は「オオカミを退治する」ということにした。
夫妻はたまに来る宿泊客のディナーのワインにストリキニーネを混入し、殺害を繰り返した。
のちに判明したところによると、1919年から1922年までの間、10人もの客を殺していたのだ。
死体は谷底に投げ捨てていたらしい。
オオカミが出没するので死体は食べられていた可能性も高い。
「旅人が消えて行く」と近所で噂がたちはしたものの、犯行は発覚しなかった。
息子を殺してしまった!!
10人を殺し、金品を奪った夫妻は経済的にも潤った。
11人目の客が来た。
その客は土地を買う予定だと言い、多額の現金を持っている様子だった。
夫婦はいつものように、ディナーのワインにストリキニーネを混入した。
客はいつもと同じようにストリキニーネ特有の「弓なり緊張」となって体をのけぞらせ、紫になった顔面をひきつらせて死亡した。
夫婦は客のスーツケースをあさった。
すると、1枚の写真が出てきた。
写っていたのは若き日のクロンベルク夫妻だった。
ということはこの客は・・・。
そう、出奔していた夫妻の息子だったのだ!!
食堂に座っている人は・・・
数日後、別の客が旅館を訪れた時のこと。
もがき苦しんだ形跡が見られる3人の死体があった。
息子とクロンベルク夫妻のものだった。
夫妻もまたストリキニーネを服毒したらしかった。
こうして、旅人が消えて行く謎が判明した。
時がたち、この旅館を買い取ろうという者が何人か現れたが、みな一様にして逃げ帰った。
なぜか?
この旅館の食堂には、体をのけぞらせ、顔面をひきつらせた13人が着席しているのだから・・・。