今年2015年に開創1200年をむかえる、真言密教総本山高野山。
この山の附近には「骨(こつ)のぼせ」(または「骨のぼり」)という行事があります。
近い地区(九度山、橋本など)では葬儀の翌日に、少し離れた場所(有田など)では四十九日が済んでから、宗派は関係なく行われます。
内容は何となくおわかりかと思いますが、遺骨を一部納める行事です。その他は遺髪など、土葬が主流だった時代は遺摘なども、紙(奉書)に包んだり竹筒に入れて納めたようです。二つ用意し、片方は檀那寺(自家の所属する寺)へ、もう一方は高野山奥の院に納めます。
現在でも行われており、葬儀の翌日であれば、遺骨や遺爪を近親の人々が代わる代わる首からかけ、雨が降っていなくとも黒い傘を差し山へ向かいます。
途中、沢などの水のあるところに生えている木の枝に、藁に包んだおにぎり(死者の弁当)と草鞋を掛け、「骨のぼせ」の本体に小枝で水を掛けます。これはお茶湯(ちゃとう)と言い、水を供える行為で、こうしてけがれを清めながら登って行くのです。
今は車を使って登るので、省略する行為も多少はあるようですが、道すがらまめに車から降り、20個近くのおにぎりを備えながら登っていく地域もあるようです。
四十九日の供養が過ぎると、忌が明け浄まっているからか中途の儀礼は簡単になります。
高野山は死者の霊が行く世界、尊い場所だと言う、山中他界信仰の対象なのです(山中他界信仰はまたの機会に…)。
納骨信仰は12世紀初頭から、皇族・貴族を中心に始まりました。それが民間にも根付き、奥の院の苔生した大量の墓標群をつくっているのです。
高野山へ登る道(国道370・480号線)沿いに草鞋が見えたら、死者が山へ登ったのだと、静かに想ってください。
ちなみに、奥の院には某有名企業の乳酸菌の碑が、比較的分かり易い所にあります。 合掌